インタビュー

写真家竹沢うるまさんとお話しました。(1)

conversation_mianheader_012013.3.27 up

写真家竹沢うるまさんとダイスプロジェクト橋爪の公開対談

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#01 きっかけは何となく?の旅のはじまり

橋爪 2010年3月18日に日本を出発して、2年9ヶ月の間世界を旅してこられた竹沢うるまさん。昨日福岡に戻られました。
うるま 会話をするような感じで気軽に質問してくださいね。よろしくお願いします。

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 拍手(パチパチ)

はじまりました。

橋爪 この旅に出る決定的なきっかけはあったのですか?
うるま いえ、実は全然ないんです。何となく。ダイビングの雑誌社でカメラマンとして働いていた時から、世界中のいろんな海で水中写真を撮っていました。フリーランスになってからも撮り続けていた海の写真を、2005年に作品として本にまとめたんです。それが自分の中でひとつの区切りになったんですよね。それから「新しいことをやらないと、次何やろうかな」って考えた時に、固まった考えはなかったけど、世界を見て来ようかなって思ったんです。

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橋爪 へぇー。そのとき、はじめからこんなに長い旅を予定していたんですか?
うるま いえ、はじめは半年くらい南米に行ってみようと思っていて。色んな人に話していたら、どんどん話が大きくなっちゃって。それで、じゃあ1年くらいかけて世界一周しようと出発したんですが、それが3年になっちゃいました。だからはじめはすごく気軽な感じだったんです。でも出た時は32歳でしょ。年齢的にも体力的にも気力的にも、行くとしたら今しかないかなとは思いました。一番直接的なきっかけは、その時付き合っていた女の子と別れたからですが。何か自由やん、みたいな(笑)。だけど、もっともらしい理由はないんです。“自分探しの旅”とか、そういう側面もありますけど。ありきたりな言葉ではまとめたくないので。
橋爪 ルートは行き当たりばったりだったんですか?
うるま だいたいのルートは決めていましたよ。でも、インターネットや本の情報に縛られたルートは組みたくなかったんです。写真家としての仕事で行きたいと思っていたので、連載なり企画を出版社に提案したんですけど、だいたいの編集者はこう言うんです。「で、何しに行くの?」「どこに行くの?」「何を撮ってくるの?」「テーマは?」って。テーマなり視点というのは旅を充実させるひとつのツールであるかもしれないけど、同時に自分の視野を狭めてしまうツールでもあると思います。その視点というのは日本での生活や情報、自分の考えの範囲の中のものでしかないんです。旅をしているうちにいろんなものを見て、出会いがあって、さらにその奥に進んで吸収して、新しい自分が構築されていって…だから、その中で出てくる視点を得たい、旅の途中じゃなくても帰った時にそういうものを得られたらいいんじゃないかなって思って出発しました。

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たくさんの出会いがあったと思うんですが、印象に残るエピソードがあれば教えてください。
うるま そうですねぇ。ひとつ挙げるとしたら、エチオピアの集落をまわっていた時かなぁ。僕は文明社会から来ているから、いわゆる西洋医学とか体のことを“知ってる人”と思われるんです。だから「ここが調子悪い」とか「怪我したから何とかしてくれ」っていろんな人が僕のところに来るんです。その時も、ある家族が僕のところに「自分の息子がヤケドしたから家に来て診てほしい、薬もあればほしい」と寄って来たんです。一度手を貸してしまうと何とかしないといけなくなるので初めは断りました。でも何度も訴えるから、行くだけ行ってみることにしたんです。家に行くと暗い部屋に強烈な臭いが充満していて、横たわる息子さんの足は全部ヤケドでただれていた。数ヶ月前からだと思うんですけど、それが化膿して下半身全部が2倍くらいに腫れ上がっていたんです。そんな状態なのに、その息子さんは体を半分起き上がらせて、屈託のない笑顔で「来てくれてありがとう」って言ったんですよね。その時に握手を求められたんですけど、その手を握れなかった。何か冷静な自分がいて。そこに触れたらあかんと頭で考えてしまった。今考えたらアルコールとか消毒液持ってたし、握った後に手を洗えば良かったんです。でもできなかったんですよね。僕は結局何もすることができなかった。

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うるま どうして死が間近に迫ったその状況においても彼はこんなに屈託のない笑顔を浮かべられるんだろうって。その時はいろいろ考えました。そして、僕はやっぱり彼らの世界に属していない、満たされた世界で生きてきた人間なんだって実感しましたね。そこからアフリカに対する捉え方が随分変わりました。滞在するうちに、アフリカに魅力を感じるようになって。僕が一番好きな大陸は間違いなくアフリカです。僕らの想像を超えるものがあります。

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