佐賀酒学

佐賀酒×佐賀県産食材。無数の可能性を実践で学ぶペアリング体験!〜「佐賀酒学」第2回レポート〜

佐賀の地酒の楽しみ方を発見する体験型セミナー「佐賀酒学」。業界を牽引する日本酒のスペシャリストを講師に迎え、佐賀酒の知識はもちろんのこと、佐賀県産食材や伝統工芸品と組み合わせた楽しみ方を学ぶことができます。

第2回目のテーマは、「プロのための、ペアリング再考。」。福岡・平尾の日本料理店「食と酒 なかむた」の店主、中牟田 太仁さんを講師に迎え、佐賀酒と佐賀県産食材の料理でペアリングを実践的に学びました。

ペアリングで大切なのは“味の引き出しを増やすこと”

自身が経営する「食と酒 なかむた」でも、佐賀酒をメニューに並べているという中牟田さん。「以前の佐賀の酒は素朴で丸みのあるお酒が多かったのですが、近年は洗練されたモダンな酒が増え、料理との相性を考えるのがますます楽しくなりました」と話します。

この日は、そんな佐賀酒を料理と合わせてより美味しく味わうために、まずは、ペアリングの基本となる4つのアプローチが紹介されました。それが、似た味同士を組み合わせる「調和」、足りないものを補い合う「補完」、強い味などを打ち消す「中和」、おいしさを増幅させる「相乗」です。

ただし、「組み合わせの正解は1つではない」と中牟田さん。酒と料理が互いの輪郭を整え合い、最終的にひと口で、“ふっと笑みがこぼれるかどうか”が、中牟田さんにとってペアリングの基準なのだそうです。

日本酒の香りや酸、味わいの厚みをどう捉えるか。料理の方向性をどう読むか。さらには、季節や酵母の違い、温度帯による変化など、ひとつの杯をめぐって判断する材料は実に多様です。だからこそ「難しく考えるより、まずは飲んで感じること。自分の中に“味の引き出し”を増やしていくのが大事です」と話します。

佐賀酒 × 佐賀県産食材の料理で味の重なりを体感!

ペアリングの基礎を学んだら、お楽しみの実践編!中牟田さんセレクトの佐賀酒と、お手製の料理を組み合わせていただきます。日本酒は「基峰鶴 greeting(基山商店)」「万齢 純米吟醸(小松酒造)」「肥前蔵心 純米」(矢野酒造)」「宮の松 純米七割磨き火入(松尾酒造場)」の4種のラインナップ。料理には、佐賀海苔や金星豚などのほか、野菜や果物にも佐賀の食材が使われ、有田焼や肥前吉田焼の器に盛られています。

「基峰鶴 greeting」は、単体で口に含むとフレッシュな香りと柔らかな果実味が広がる一本です。そこへ「柿の胡麻クリーム」を合わせると、若いお酒が持つ控えめな苦味がほどよく整い、香りの伸びも軽やかに。胡麻クリームで味わいに奥行きもプラスされ、自然と顔が綻びます。

続いて試したのは、「万齢」を軸にした二つの組み合わせです。「鯛の昆布締め」には、万齢が持つ落ち着いたうま味が、鯛のしっとりした質感と重なり、後味にふわりと上品な余韻を残します。香りを主張し過ぎず、淡いうま味の層をそっと押し上げるような寄り添い方に、参加者からも「この合わせ方、好きだなあ」という声が。

一方で、「トマトと佐賀海苔のサラダ」を万齢に合わせると、印象が変わります。トマトの酸と海苔の磯の香りが、お酒の芯にあるうま味と混ざりあい、瑞々しさのあるペアリングに。佐賀県を代表する佐賀海苔の香りが一層際立ち、日本酒の持つ“海の香りとの相性の良さ”を改めて感じさせてくれます。

3つ目のお酒「肥前蔵心」のペアは、「茄子と鶏つくねのスープ」。肥前蔵心はしっかり感じられる純米酒ですが、単体で飲むと熟成感もあって、同じテーブルの参加者でも好みが分かれる味でした。ただ、スープと合わせていただくと、まろやかでぐんと際立ったうま味が口いっぱいに染み渡るよう。「このお酒、私は苦手かも」と話していた隣席のマダムも、「さっきより飲みやすくて、違うお酒みたい」と声が弾みます。ペアリングの相乗効果を実感する瞬間でした。

八角を効かせた「豚の角煮」と「宮の松」の組み合わせでは、角煮の甘辛さとスパイスの香りに対して、宮の松の力強い味わいがぶつからず、むしろ溶け合っていくかのようです。八角の深みをしっかり受け止めつつ、後味をすっとまとめてくれるお酒で、料理人である中牟田さんも「こういったスパイスの入る料理ほど、お酒の“地力”が見えるんです」と微笑みます。

組み合わせる料理が変わるだけで、同じお酒がまったく違う表情を見せる。その奥深さを体験しながら、佐賀酒の豊かな魅力を改めて感じる時間になりました。

佐賀県産食材を楽しむため“自分の一杯”を見つける

続いて登場したのは、会場となる「天神福食堂」が、佐賀酒学のために開発した特製「レンコンはさみ揚げ」です。使われているのは、佐賀県白石町の白石レンコン、レモン 璃の香、有田町のありたどりなど、佐賀の風土が育んだ素材。揚げ物ならではの香ばしさに加え、ありたどりとチーズのコク、レモンの爽やかな酸味が複雑に重なり合います。

そんなさまざまな表情を持つ料理とあって、どの佐賀酒がしっくり来るのか…参加者の間でも意見は分かれました。香りの立つお酒ならレモンの爽やかさと呼応し、味わいに厚みのある純米酒なら鶏とチーズのうま味が引き立ちます。揚げ物の余韻をやさしく整えるのか、それとも香ばしさに寄り添って力強く受け止めるのか。

「どれが正解というより、自分の中にある味の引き出しで判断してみてください」と中牟田さん。参加者がそれぞれに“自分の一杯”を探り、「私はこの組み合わせが好き!」「私はこっちかな」と盛り上がります。佐賀の食材が持つ奥行きと、佐賀酒の多彩な個性。その組み合わせが生む無数の可能性を、誰もが実感できる場面でした。

正解がないからこそ無限に広がる、佐賀酒の世界

ペアリングを一通り実践した後は、佐賀酒をより深く知るため中牟田さんへの質問タイムです。今回は、飲食店経営者も多く参加しており、「香りの強いお酒に合わせる料理は?」「開栓後の変化をどう読む?」「お客さまのコンディションに寄り添うには?」など、現場ならではの視点が次々にあがりました。

やりとりを聞きながら感じたのは、ペアリングに“ひとつの解答”を求めなくていいという安心感です。お酒の酸や香りの立ち方、料理が持つ個性、そして食べる人の体調や気分。どれを軸にするかで導き出す答えは変わり、そこにこそ日本酒と料理を合わせるおもしろさが潜んでいるのかもしれません。味わいの引き出しを増やしながら、自分の感覚と経験を重ねていくプロセスそのものが、ペアリングを楽しむコツなのだと思わされました。

佐賀酒に、佐賀の食材をふんだんに使った料理、器にまで佐賀を取り入れたことで、佐賀の魅力を教えてくれた今回の佐賀酒学。とことん“佐賀を味わう”ひとときで、佐賀酒の世界がまたひとつ広がる時間でした。

(取材:編集部、文:ライター/戸田 千文、写真:カメラマン/西澤 真喜子)