北崎ひもの通り「まる弥の魚卓」漁師のお母さんが毎日仕込む、新鮮なひものと鯛茶漬け

北崎ひもの通り「まる弥の魚卓」漁師のお母さんが毎日仕込む、新鮮なひものと鯛茶漬け

2016.03.31(木)

まる弥の魚卓 柴田 弥生さん

福岡市の西の端、糸島市と隣り合う、西区の北崎地区。小田、畑中などの農業地域と、唐泊、西浦などの漁業地域からなり、人口約3,000人、870世帯が暮らしています。玄界灘に面する漁業地域は、対馬海流の荒波に揉まれて、脂ののったおいしい魚が水揚げされる、資源の豊かな地。しかし、高齢化率は北崎全体で25%を超え、他の地域と同様に後継者不足が問題となっています。そんな中、この西浦(にしのうら)では、地元の魚をおいしく食べられ、お土産も買える「北崎ひもの通り」が漁師のお母さんたちの手で立ち上がり、10年以上営業を続けています。今回は、ひもの通りで「まる弥の魚卓」を営む柴田弥生さんにインタビュー。お店のことや商品のこと、北崎のこれからについて、聞いてきました。


その日のうちに仕上げるひもの

—「北崎ひもの通り」は、いつ、どんなふうにできたのですか?
北崎の中でも西浦地区は、牡蠣で有名な唐泊と糸島の間やけん、国道を通ってみんなひゅーっと通り抜けてしまって、人が寄ってくれんとですよ。それじゃいかん、おいしい魚を使って何かしようって、12年くらい前に「ばんじろー」(2軒となりのお店)さんが最初にこの場所でお店を始めて、次に「太洋丸のお魚」さんができました。うちの店は、私がゴルフ場のキャディの仕事を辞めた7年前から始めて。この建物はもともと、いりこ出汁用のいわしの加工工場やったんです。いわしを茹でる大きな釜が並んでて、昔はみんなここで作業しよったとですよ。いりこがあまり穫れんくなって、使われなくなったんで、柱だけ再利用して、店を営業できるようにしたんです。
—生魚じゃなくて「ひもの」が売りなんですか?
生の魚を出すには飲食店の営業許可も必要やし、毎日お客さんに来てもらわないといかんでしょ? ひものだったら加工品やから日持ちもするけん、始めやすかったってことですね。結局うちの店は中で食事も出せるようにしたんで、食品衛生責任者の資格も取りましたけど。ひものと言っても、新鮮なんですよ。その日の内にパック詰めまでしますけんね。
—その日のうちにパック詰めされるのですか?
そうですよ。船から選んで仕入れた魚を塩漬けして、乾燥させて、夕方くらいに袋詰めまでします。夏だと乾きが悪くて、終わらない場合もあるけん、その時は先に漁から帰ってくるお父さんたちを迎えにいって、家でご飯食べさして、それから加工場に戻って続きをやるんよ。遅いと夜中の1時ぐらいまでかかることもあってね。

「まる弥の魚卓」のメニューは、基本的に2種類。小鉢・ひもの・みそ汁つきの鯛茶漬け丼(980円)と、好きなひものを選びお母さんが炭で焼いてくれる、ひもの定食。(ひもの代+600円)。お米はお母さんの故郷、一貴山の棚田米。小鉢の切干大根もきゅうりも、地元の新鮮なものばかりです。4〜12月の土日祝日お昼のみオープン。

—大変ですね! 魚はお母さんが船から仕入れるんですか?
そうです。うちも、ここでお店してる他の人も、みんなお父さんは漁師やけん。自分で選んでいい魚を買えるのは、嬉しいよ。「この魚でひもの作りたい!」って思うけんね。

地元の味をそのまま商品に

—どんな魚が穫れるんでしょう?
なんといっても、この辺りは鯛が一番! 桜鯛、連子鯛、イサキ、カワハギなんかが穫れます。去年はウマヅラハギが穫れたので、うちの店でも味噌汁にして出しましたよ。でも1〜3月は、漁はお休み。だから、この店もお休みします。4〜12月が漁の期間やけど、シケだの何だのと漁に出られん日も多くてね。

糸島半島の北端に位置する西浦。唐泊の牡蠣の賑わいや、糸島のリゾート感とも違い、地元の生活の中にある静かな海が広がっています。

「まる弥の魚卓」の人気商品。手前が、鯛茶漬の素(310円)と鯛飯の素(520円)。新鮮で肉厚の鯛と、甘い漬けダレで大満足の一品。ひもの類は、左から時計回りにかなぎ、鯛、いか、さば(時価)。まとめ買いのお客さんも多いとか。

—鯛茶漬の素や、鯛飯の素もあるんですか。おいしそうですね。この商品は、どうやって生まれたんですか?
うちで昔から食べてた鯛茶漬や鯛飯を、そのまま商品にしたの。鯛茶漬の方は、解凍したらまずはそのまま刺身で食べてもらって、残りはねぎを入れてお茶漬に。鯛飯の素は、炊き込みご飯ではなくて、炊いた白米に後から混ぜ合わせる、混ぜご飯ね。西浦独自の食べ方なんですよ。地元のしょうゆを使ってるから、甘みがあっておいしいの。この2品は、お歳暮やお中元でよく注文が入る人気商品です。

家族や親戚、若い人の助けも借りて

—高齢化が地域の課題と聞いています。実感はありますか?
うちのお父さんがいま65歳で、船頭さんは63歳、あとは70代の乗組員もふたりいますから、やっぱり高齢化してるかしらね。でも最近になって、若い人も手伝ってくれるようになりましたよ。仕事は重労働やけど、ちゃんと頑張ってくれとって嬉しいですよ。
—よかったですね。お子さんたちも手伝ってくれるのですか?
うちの娘ふたりも、よく手伝ってくれますよ。上の娘は、いま長浜の会社で働いてるけど、週末に店を開けてるときは、いつも手伝ってもらってます。ちゃんとバイト代を出せない時もあるから、申し訳ないんやけど。Facebookも2年くらい前に、娘から「お母さんもこんなんせな、売れんよ」って言われて始めて。私はほとんど写真を撮るだけで、文章は娘が書いてくれとるの。私が書くと、真面目でつまらないものになっちゃうけど、娘が書いたら読みやすいけんね。

弥生さんの娘さんが描いた直筆の看板。お店のロゴや、商品ののし袋も、器用な娘さんによるデザインです。

—お店の今後の展望を教えてください。
まずは、この場所でおいしいひものを作って、営業を続けていくことですね。お客さんが食べにきてくれて、おいしいって言ってくれるのが、やっぱり一番嬉しいとですよ。それに、例えば天神のデパートで出品したり、他の場所で売ったら、その分値段も高くせんといけんくなるんで、それは心苦しいですね。だから、うちに来て買ってくれるのが嬉しいし、そのためにメニューももっと増やしたいですね。
—地域の将来のために、これから取り組みたいことはありますか?
国道沿いに「志摩の四季」や「伊都菜彩」みたいな直売所を作りたいと、前から考えとるんですよ。北崎は、花も農産物も海産物も資源が豊富なのに、売る場所がなくてね。遊びに行くのが目的で糸島方面に向かう若い人は、なかなかひものまで買って帰ってはくれんので。北崎の食材をまとめて買える場所があれば、きっと売れると思いますよ。いいものが多いけんね。私自身も、いいひものを作る方にもっと専念できたら、嬉しいですね。

まる弥の魚卓

所在地 福岡県福岡市西区西浦ひもの通
URL https://www.facebook.com/Maruya.yayoi

※「まる弥の魚卓」の鯛茶漬やひものは、「パームビーチマーケット23」でも一部購入できます。


PAGE TOP